保育園
nursery school
—保育園における活用事例—
就学前学校 Stinsgårdens förskola
【2012年調査】
【園長 Marie perssonさんへのインタビューより】
マルメ市から電車に揺られて30分の場所にあるシェブリングは、緑豊かな小さな街だ。この街にある保育園、「Stinsgårdens förskola」でもスヌーズレンの理念は導入されている。スウェーデンの保育園は以前、社会福祉省の管轄であったが、1998年に幼稚園と統合され「就学前学校」と名称を変え、管轄も教育庁(日本でいう文科省)となった。それには、女性の社会進出が進み、ほとんどの母親が子どもを保育園に預ける時代となったことが背景にある。
この園はいわゆる統合保育を行っており、障害のない子ども、障害がある子ども、半々の児童が通園している。それぞれの子どもたちが日々の活動をする建物は別れているが、全ての子どもが使える施設の1角に、リラックスを目的とした環境としてホワイトルームが存在している。〝ルーム〝とは言っても、1つの部屋ではなく、カーテンで仕切った一角の小さなコーナーである。
オランダの乳幼児デイケアセンターが大型スヌーズレンセンターでスヌーズレンについて学んだ後、自身の施設の環境設定をしたのと同じく、この園の担当者もまたSafirenで研修をした後、自身の保育園に環境設定をしていた。この施設では障害の有無に関わらず、子どもたちが興奮した状態の時にリラックスするためにこのスペースを活用しているが、保育園であるため一人一人のニーズに合わせて環境設定するには限界がある。
そういった意味では1章で定義した「Sensory room」と呼ぶ方が適していると言えるであろう。しかし、この空間は思い通りにいかず興奮してしまったり、ストレスがたまってしまったりした子がクールダウンする場所として役立っている。また、そうした場所だと知っている子どもたちは、泣いて手のつけられない状態になった子がいると、自然と誰かがここへ連れてくるのだという。まだ言葉では他者をうまく慰めることのできない子どもたちの、小さな優しさを育むきっかけとしてもこのスペースは作用しているという。
この空間について、園長のマリー先生はこう語る。「現代の子どもたちは、どんな子でもストレスを抱えているからこの環境が必要。子どもたちは忙しい親の都合でここへ連れてこられて、お迎えが来たらバタバタと帰る。子どもたちは、そのスピードについていくのが大変なんです。」 自然が溢れた地域であっても、子どものそばにいる「親」という環境がスピーディーであると、子どもたちはそのスピードについていくのが大変なのであろう、マリー先生は続けてこう話す。「本当はお母さんたちにもここを利用してほしいのですが、子どもを迎えに来るお母さんたちは早く子どもを家に連れて帰りたいので、入ってくれる人はほとんどいません。少しでも子どもたちとゆっくり過ごしてくれたらいいのですが…。」
筆者もワーキングマザーであるのでよく分かるが、母親は家に帰ってからも家事という別の仕事がある。子どもを迎えに行った先の保育園で、ゆっくりとしている時間などないのであろう。スヌーズレンにおけるMSRやSensory roomという物的環境は、対象者の感情や行動を変化させるツールであり、ケアする人という人的環境に働きかけてこそ、スヌーズレンという活動が生まれるということを実感したインタビューであった。
私たちの活動より
親子でスヌーズレンルーム体験
日本でもワーキングマザーが増えていますが、働く母親を支援する制度や環境はまだまだ十分ではありません。
私たちスヌーズレン・ラボでは、諸外国での活用の実態やスヌーズレンを体験した子どもたちの保護者の実感から、スヌーズレンを乳幼児の五感刺激だけではなく、子どもたちが、保育士・親・仲間・地域の方とのコミュニケーションを深める時空間として有効的に活用できる環境設定を提案していきます。
参加者の感想(抜粋)
- 初めての場所には緊張してしまうのだが、すぐに慣れた様子だった
(6か月女児) - いつもより活発に動いている様子だった
(1歳男児) - 最近は身体が緊張して肩こりの子もいるので、とても良いと思った
(2歳女児) - 初めての場所は苦手で癇癪を起こすが、とても楽しく遊んでいてびっくりしました
(2歳3ヶ月男児) - 私自身も癒されリラックスしていたので、子どもも穏やかにしていた
(1歳9ヶ月 男児) - 私も子どももリラックスして気持ちよくて眠ってしまった
(1歳女児)
《日本でも保育園などから注目されるようになりました!!》
「インクルージョン」「ダイバーシティ」ということが叫ばれるようになり、多様な子どもたちが過ごす施設である保育園からも注目されるようになってきました。
多様な子どもたちが過ごす空間に、スヌーズレンの意義が広がっていくといいですね!